2017年11月19日日曜日

斜塔

設計ミスで傾いた塔は積み上がっていく
覆う雲のその先へ顔を出したいんだと
次第に空気は薄くなり辺りも暗くなっていく
この強い風に果たして堪えられようか

見えないままの展望を受け入れることは羨望で
抱え込んで歪み、割れ、
「倒壊も時間の問題か」


群れをなした報道記者が目下取り囲んでいる
張られた規制線すら越えんとせんばかりに
コメンテーターの論評が世論の着火材となる
聞かれもしない むしろ言いたくもない

癒えないままのこの傷も言えないままの内実も
宇宙に放ってやろう その時まで
どっちが先なんだろうね そんなのは誰も知りやしない
けれども信じてる 疑っても仕方ないから


報われぬほどこの世界は冷たくないと言い聞かせたよ
ただ独りこの星を廻り続けるあの月のように

そっと微笑んだその顔は私のヒーローそっくりだった
あの日の夢にも「過誤」というバイアスが架かった

それは七色に輝いた
人々は「虹」と呼んだんだ
その笑顔が悔しくて
涙は洪水をもたらした


方舟に乗せた貴方と私とだけの世界を
そうすればもう何も恐れなくていいでしょ?
こんな物語を綴り瞳は少し潤んできた
さようなら
それすらも告げられぬことになるとはね


設計ミスで傾いた塔は崩れ去っていく
でも瓦礫でさえ遺産なのだろう

0 件のコメント:

コメントを投稿