あなたに褒めてもらったショートカットももうすっかり伸びきってしまった
あなたに教えてもらったアーティストももうすっかり人気が陰ってしまった
あなたに買ってもらったコーデュロイももうすっかりサイズが合わなくなってしまった
あなたにもらったはずだった思い出の数々ももうすっかり遠い過去のものになってしまった
それでも私はあなたの側に居たかった
浴槽に溜めたぬるま湯に浸かっていた
そんなことも知らずあなたは遠ざかっていった
まるで磁石のN極どうしをくっつけたみたいに
ドライヤーもかけぬまま、引かれた後ろ髪の赴くまままたあなたに近付こうとした冬の暁
でも私が一歩近付く度にあなたは三歩歩みを進めた
雪が積もった後ろ髪は引かれたまま凍りついていた
あなたに淹れてあげたミルクコーヒーももうすっかり冷めきってしまった
あなたに買ってあげたチェスターコートももう使い物にならなくなってしまった
あなたに作ってあげたハート型のチョコももう全部友達に配ってしまった
あなたに許してあげた「初めて」という言葉で得られたものは何一つなかった
いい加減キリをつけたいの
もうあなたのことも忘れたいの
もう切り替えてはいるの 私なりに
でも凍りついたままの後ろ髪を見た男たちはみな去ってゆくの
シャワーを浴びもせず、ドライヤーをかけもせずただ嘆いた冬の暁
自分で髪を解かすのはいやなの
そんなんじゃ永遠にこのままじゃないのって
分かってはいるのだけど
雪解けよ
元のしなやかな髪に戻せよ
青空よ出でよ
その日差しでどうか救ってよ