2022年6月2日木曜日

Serment(第1稿)

互いに傷を刺繍しあって
「なにその模様」って笑いあう休日と
二人の空母から飛び立つその前に
「行ってきます」を交わしあう平日を




人生の大洋を漂って
巡り逢う
太陽よ 貴方よ
慟哭を乾かし世を照らし
彷徨をほどく澪標

心をも焦がすほどの灼熱を
冷めた声であしらうのも
愛よ愛 弱いの この齢でも
理解ってる二人での戯れ事よ


時を転がし続けていると
万華鏡のように煌めいて 愉しくて
永遠に美しさに見惚れて
日が暮れるわ 一生を呉れるわ



些細な溝を踏み抜きあって
「なにその思想」って憎みあう平日と
二人を空虚から連れ出すこの匂いに
間違いはないと確めあう休日を

眠れぬ夜に

涙が溢れて眠れない
数えた何万匹の羊
もう二度と目覚めやしない
「あの日までの僕」の棺

冷たい身体を包み込む
灼熱の毛布で燃え尽きれば
飛んでけるよな風にのって
どうか、温かく深いとこまで


様変わりした日常
晴天に孤独を憂えて
空(から)の脳裏
なだれ込む「あの日」に
不織布の裏 歪む

育ててた幸せの苗木
齟齬すらも楽しんでたはずが
潰えた理想
破けた未来図は
うまく棄てられやせず


も し 消 え て も 変わらないなら
も し 生 き て も 変わらないなら
な に 言 っ て も 戻らないなら
分からないよ、なあ


救われたいのはあの日の僕
護れなかった未来への餞(はなむけ)も
ままならないのさ 振り切れど振り切れど
掻き消えぬ程美しくなってしまったのさ
幻になった日



肩代わりした絶望
清廉にあるべきと信じて
馬鹿の愚考で
負わせた傷跡を
もう癒せはしないが

一面埋める瓦礫
香典に悔恨を添えても
ただの夢想
よるべないこの世に
もがくは無様 嗤え


こ わ れ ぬ よ う 出来たのかもな
い た ま ぬ よ う せめてそれなら
出 来 な か っ た ならば端(はな)から
始めなけりゃなあ


許されないのはあの日の僕
予感通り でもまた打ちひしがれる
報われないのか 愛せども憎めども
叶わない夢じゃないってこと 信じたかった
それだけなのにな



怒りも罪も薄れはしない
大時化の海原抜けて荒野
彩り奪われた世界に
残るは醜く腐った魂

2021.冠とともに

「いつも通りならどうだったかな」
平行世界を想っちゃうな
失われなくてよかったものが
どれだけ「不要不急」と切り捨てられたかな

「こんなはずではなかったんだよな」
振り返っても仕方ないな
寂しさも悔しさも辛さもやるせなさも
全部押し込めてやり過ごしてきたな


いつか元の暮らしに戻ったとき
今をどんな風に思い出すんだろな
散らばる壊れた日々の欠片の
刺さり傷をどうして癒せるのかなあ?


このままが「普通」になれば
今の「不幸」も「普通」になるのに、戻れば...
「久しぶり」の準備は出来たし
口元に吹く風は恋しい
でもこの日々に慣れちゃったんだな

生きてはいけると気付いちゃったんだよな




「きっと抗えど無駄なんだろな」
当たり前のように思えちゃうな
日光よりブルーライトをたくさん浴びて
冷たい世界に染まっちゃったかな

「あの人たちは今どうしてるかな」
ほんとは何度も会えてたはずなのにな
隔たれた道をゆき 僕も変わっちゃったな
あの人たちもきっとそうなんだろな


いずれ元の暮らしに戻ったとき
今の名残はどれだけ生まれるんだろな
しこりは消えることはないのかな
その世界で僕は笑えてるかな?


接種会場へのベルトコンベア
痛みの引き換えに何が得られんだろうな?
過去はもう元には戻らないし
今が「幸せだ」と信じるなら
わからないよな でも流されるほかは
考えられないや もう面倒なんだよな